社民党

「土人」「シナ人」暴言とウチナーへの構造的差別

2016年10月21日

 沖縄本島北部に位置する東村高江の米軍ヘリパッド建設現場には今現在、全国から500人ともいわれる機動隊員が派遣されている。沖縄防衛局、沖縄県警が不法不当な権力を行使して、米軍ヘリパッド建設工事に「非暴力抵抗闘争」を続ける市民に襲い掛かっている。
 
 私は、これまで幾度となく抗議現場に足を運び、多くの市民らと共にヤンバルの森と貴重な生態系を守り、高江住民の平和的生存権を守るべく連帯行動をおこなってきた。

 素直に言うと、東村高江の米軍ヘリパッド建設工事現場では、国がその威信にかけて国家権力を総動員し、高江住民の、そしてウチナーとウチナーンチュの民意を圧殺せんとする反民主主義的な行為が平然と繰り返されている。許せん!

 私が言う「反民主主義的な行為」とは、沖縄防衛局と県警による市民の監視テント撤去、不法不当な交通規制と検問、地元2紙記者の不当拘束による報道・取材の自由圧殺―などである。
 これらの事実は、沖縄のメディアによって毎日のように報道されるが、中央メディアはほとんど黙殺している。報道しないのだ。

「土人」「シナ人」暴言とウチナーへの構造的差別
10月20日付「沖縄タイムス」「琉球新報」

 さて、去る18日、東村高江の米軍ヘリパッド工事に反対し、フェンス越しに抗議する市民に向けて、全国から派遣された機動隊員らから発せられたのが、ブログ表題の「土人」「シナ人」という暴言である。

 具体的な事実関係を記そう。
 10月18日午前9時45分頃、芥川賞作家の目取真俊さんら市民数人が、沖縄防衛局が設置した侵入防止用フェンス越しに工事状況の確認をしていたところ、大阪府警から派遣された機動隊員が「触るなクソ。どこつかんどんじゃボケ。土人が」と罵声を浴びせた。(いわゆる「土人」発言)

 この「土人」発言は、地元メディアが大々的に報じ、市民が撮影した発言現場の動画が全国ネットのテレビでも報道された。

 「土人」報道に接した多くの県民から怒りの声が高まっている。かかる暴言は、単に大阪府警機動隊員によって目取真さん個人に発せられたものではなく、構造的沖縄差別に深く根差している。ウチナーンチュを侮蔑し、蔑視するヘイトスピーチそのものであり、明白な犯罪行為だ。

 「土人」発言の翌19日には、沖縄選出野党国会議員団「うりずんの会」で、警察庁の担当者に強く抗議するとともに、警察庁及び沖縄県警の謝罪を要求した。
 私からは、「土人」との暴言を吐いた機動隊員を即刻警備現場から撤収(配置換え)させるように、と求めた。(報道によると、当該機動隊員は、19日中に大阪府警に引き上げたようだ)

 「土人」発言と同時に、別の機動隊員が抗議市民に「黙れこら、シナ人」と罵る暴言もあった、と報道されている。(報道によると、当該機動隊員は、20日中に沖縄を離れ大阪府警に戻ったようだ)
 
 知事は19日の記者会見で「県知事としても言語道断で到底許されるものではなく、強い憤りを感じている」と批判し、20日には沖縄県警の池田克史本部長を県庁に呼び、抗議している。池田県警本部長も「土人」「シナ人」発言の事実を認め、知事に謝罪した。

 一方、菅官房長官は、19日の記者会見で「土人」発言に関し、「警察官が不適切な発言を行ったことは大変残念だ。今後はこのようなことがないよう警察で適切に対応するだろう」と述べている。
 菅長官よ、ことはウチナーンチュに対する明白な差別発言である。「不適切な発言」で済まされる問題ではあるまい。

 私たち沖縄選出国会議員の抗議や沖縄の怒れる世論を受け、坂口正芳警察庁長官は、20日の記者会見で「不適切であり、極めて遺憾だ。今後このような事案の絶無を期す」と述べ、「土人」発言した機動隊員から事情聴取したうえで、処分を検討する方針を示している。

 「土人」発言をした大阪府警機動隊員を唯一かばった公人は、日本維新の会代表の松井一郎大阪府知事だ。
 松井知事は、19日午後9時12分に短文投稿サイト「ツイッター」で「ネットでの映像を見ましたが、表現が不適切だとしても、大阪府警の警官が一生懸命命令に従い、職務を遂行しているのがわかりました。出張ご苦労様」と投稿している。
 誠にもって不見識、非常識だ。ウチナーンチュの尊厳に対する配慮がまるでない。驚きと怒りを通り越して呆れてしまった。
 さすがに、日本維新の会に所属する沖縄出身2名の国会議員も松井知事に抗議の意思を示し、同党県総支部として松井知事への抗議状を党本部に提出した。だが、後の祭り、焼け石に水だ。多くの県民が日本維新の会代表の「正体」を見たことだろう。

 私は、今回の「土人」「シナ人」発言の本質は、琉球処分以降、今日まで連綿と続くヤマト政府とヤマトンチュによる根強いウチナー差別にある、と考える。
 個人的な感覚で言えば、おそらく8割以上のヤマントチュの心中心理として、ウチナーンチュは「土人」だ、との意識があるのではないか。明治以来の歴代政権もウチナーンチュを日本人として扱ってこなかった。これが「歴史の事実」だ。

 「土人」発言について、地元2紙に多くの識者が評論を寄せている。その中で、私は21日付琉球新報に投稿された沖縄大学非常勤講師の親川志奈子さんの指摘が一番適格だ、と評価する。

 親川氏は「日本人が沖縄を見る時の差別のまなざしがはっきり表れた表現だった」「私たちは「『土人』なんかじゃない、同じ日本人だ」という反応はしてはいけない」「多数派や権力側に付くことに価値を置き、彼らに同化する必要はない」「少数派や弱者であることが問題なのではなく、少数派や弱者を差別する社会が問題なのだ」―などと指摘している。

 実に論旨明快だ。ウチナーの歴史を踏まえた正解だ、と賛辞を送りたい。私がかつて『ウチナーンチュときどき日本人』を著したのは間違いでなかった。

10月21日 

Posted by terukan at 18:28
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